オバログ

日記から読んだ本や映画の感想、時事問題まで綴るブログです。弱者の戦い方、この社会がどうあるべきかも書いていきます。

相方は、統合失調症という本を読んだ感想を述べてみる。

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松本ハウスをご存知だろうか?かつてボキャブラ天国や電波少年などで活躍したハウス加賀谷さんと松本キックさんの2人からなるお笑いコンビだ。僕自身幼かったから記憶はおぼろげだがボキャブラに彼らが出演していたのは何となくではあるが覚えている。

 

そんな彼らは一度コンビを解散し表舞台から姿を消した過去がある。それはハウス加賀谷さんが統合失調症によって活動を続けるのが難しくなってしまい、病気療養する事となったからだ。

 

今回僕が読んだ、「相方は統合失調症」という本。この本は加賀谷さんの相方である松本キックさん目線で書かれている。加賀谷さんが病気を治すために芸人をやめてからのこと。その間の加賀谷さんの病気療養のことやキックさん自身の活動、そして紆余曲折あって10年ぶりのコンビ復活してからのことなど。

 

だが、コンビが復活したと言っても順風満帆とはいかない。加賀谷さんは統合失調症が完治したわけではない。薬でコントロールしている状態。それでもお笑いコンビとして芸を磨き舞台に立つ。病気の影響でなかなかセリフを覚えられない加賀谷さん、セリフに感情がのらない、舞台でうまくいかない、以前とは何か違う。キックさん目線で書かれているので読みながらキックさんの焦燥感とかイラ立ち、悩みや葛藤などが文章を通じてこちらにまで伝わってきた。加賀谷さんもしんどかっただろうが、キックさん自身も色々な大変だっただろうと思う。

 

それにしても僕がこの本を読んでいて感じたのはキックさんという人の優しさだ。ご本人が書いているのでもしかしたら多少いいように書かれているのかもしれないが、それでも随所に優しいなと思わされる。彼は加賀谷さんが一度芸人を辞めるといった時こんな言葉をかけている。

 

「1年たってもいい。2年たってもいい。5年かかっても、10年かかってもいい。その時に芸人をやりたいと思ったら言うてこいよ。そしたらまた、一緒にやったらええやないか」

引用元:相方は、統合失調症

 

10年も誰かを待つなんて事を自分ならできるだろうか?そんなことを考えてしまう。それが自分の家族とか生涯愛を誓った相手とかなら話は別だ。でも加賀谷さんはあくまでお笑いコンビの相方に過ぎない。しかも治るかどうかも分からない病気と闘っている。

 

もちろん、じーっと待ち続けているわけじゃなくてキックさんなりに色々と活動した結果いつの間にか10年経っていたという感じだろう。過度な期待を持たないようにしていたとキックさんも本書で語っている。それでも、10年経って戻ってきたいといった相方をすんなりと受け入れられるのだろうか?僕がキックさんの立場ならそうできる自信がない。

 

しかも、彼は加賀谷さんが病院から退院した時から電話でコンタクトをとっている。復帰を焦らせないように、3か月に1回程度日常会話程度のやりとりだ。でもそこには「決して見捨てたりしない、お前は一人じゃない」というメッセージが込められている。そんなキックさんの気づかいに「すごいな、この人は。」と素直に思った。

 

また、本書を読んでいて改めて思ったのは「統合失調症」という病気と付き合っていくことの難しさだ。僕自身は統合失調症という病気にかかったことがないし、周りに発症した人もいない。幻覚や妄想があるということは知っていたが、本書に書かれている加賀谷さんの症状を知れば知るほど恐ろしさを感じる。「自分だったら生き残れるのか?」

 

中にはそのまま苦しみ抜いて病院で一生を終える人もいるだろう。その苦しさから命を絶ってしまう人もいるかもしれない。実際加賀谷さん自身も睡眠薬を過剰摂取し自殺を図ろうとしていた。そう考えると統合失調症からお笑い芸人に復帰することができたのは奇跡と言えるのかもしれない。

 

でも、それはおそらく相方のキックさんの功績が大きい。キックさんが10年加賀谷さんを待ち続け、ピンで活動し再び松本ハウスとして帰ってくるための居場所を残しておいてくれていた。キックさんが新たなパートナーと組んだり、芸人を辞めていれば加賀谷さんはおそらく芸人としては復帰できていないだろう。

 

そして、「芸人に復帰する」ということをよりどころとしていた加賀谷さんはその道が絶たれたらどうなってしまっていたのか、想像すると怖くもなってくる。そういうギリギリ紙一重のところを乗り越えた末に「松本ハウス」の再結成があったのだ。本書を読むとこれは凄いことなのだと思った。簡単なことではない。決して簡単なことではないんだ。

 

現在松本ハウスは加賀谷さんの統合失調症の経験からお笑いコンビとしての活動と共に「統合失調症」への理解を深めるための講演を行っている。彼らが歩んだ道のりはものすごく困難な道だった。お笑いというただでさえ平たんではない道に病気というやっかいなものが立ちはだかった。でも、そんな病気と向き合い続けている彼らだからこそ言えることがある。彼らの言葉を聞き同じように病気と向き合っている人に伝えられることがきっとあるはずだ。

 

お笑いコンビ松本ハウス。彼らが今後どんな活動をしていくのか。ぜひ彼らにしかできないことをやり続けてほしいと思う。

 

それでは今回はこの辺で!!

最後までご覧いただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

 

 

こちらに厚労省の統合失調症のページを貼っておきます。統合失調症の概要について理解できるので是非読んでみてください。


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