以前、書いた記事で『藝人春秋』という本を紹介した。
この本は僕のお気に入りの本の一つなので、ぜひ一度は読んでいただきたい本である。ただ、今回はこの本自体を紹介したいのではない。
本の中でいじめについて書かれている章があるのだが、その中で紹介されている伊集院光とピエール瀧のいじめ問題に対する掛け合いが素晴らしいのだ。
伊集院光のラジオ『伊集院光 日曜日の秘密基地』のトークを水道橋博士が引用したものが本書で紹介されていてそれがとてもすんなり心に入ってくる。お偉い人の空っぽの言葉や『いじめかっこ悪い』という、なんだかかっこいいんだかかっこ悪いんだかわからないフレーズよりもよっぽど響く。
引用の引用という形になるのだがここに彼らのトークを載せてみようと思う。
瀧 今さ、巷で昨今のいじめ問題とかあるじゃないですか?いじめるヤツ、いじめられるヤツ、あのね、そいつらに言いたい。お前ら将来伸びるから、今、死んじゃダメ!(爆笑)
伊集院(笑いながら) ホントに青臭いことじゃなくて、その一瞬、お前ら敵に囲まれたと思うけどその外側にもっと凄い色んなことあるから!(爆笑)
瀧 今、受けたそのひどい体験は、今のお前にとっては受け入れがたいかもしれないが、お前その経験をしとくと、将来伸びるから!!(爆笑)
伊集院 ブハハハハッ!!
瀧 今死ぬな!! 伸びるから!! って感じ(爆笑)。
伊集院 お前ら、びっくりするだろうけど、今お前の周りにいる30人全員敵だろ?だけど、その周りに300人いて、その周りの3000人が全員敵になる瞬間があって、30000人が急に味方する時があるから。その一層(30人)だけで判断するなよ‥‥‥‥‥‥。
瀧 (笑いながら) 判断するなってことを言いたいオレは! フハハハハッハハ。
引用:藝人春秋 水道橋博士 P326~327
2006年11月12日放送 『伊集院光 日曜日の秘密基地』
この会話を見てどう感じただろうか??最初のいじめるヤツについても死んじゃダメと言っているのは、自責の念にかられてっていう事だろうか?その部分についてはよく分からないが、あとの部分については非常に心に響く言葉だと思う。
いじめの世界というのはとても狭い世界だ。学校という場所自体の狭さもあるし、人間関係の狭さもある。仮にいじめられたとしたら、基本的には逃げ場がないと思う。そして、確実に視野は狭くなる。学生にとって一日の大半を過ごす『学校』は生活の全てと言っても過言ではない。
二人の会話はその狭い世界だけを見るなと言っている。外側を見れば学校以外の違う世界が広がっている。それは確かだ。ただ、いじめられている人はなかなか外側の世界を意識することが出来ない。頭の中は学校の事でいっぱいなはず。
僕はそんな場所なんか逃げ出してしまえばいいと思う。学校がしんどいなら、行かなくてもいい。親に悪いと思うなら、行ったふりをして図書館にでも通えばいい。
以前死にたくなったら図書館においでというツイートが話題になったが、逃げちゃえばいいのだ。命を失う必要なんて全くない。
ちなみに、『逃げる』という選択肢をよしとしない人もいると思うが、『明らかに勝てない戦は逃げるべき』だと思う。まさにいじめはその勝てない戦に当てはまる。
戦場だって、敵を前にして逃げるときはある。そりゃ、全滅する、命を失う危機が訪れている、明らかに自分が不利な状況であるならば訓練された兵士でも逃げるのだ。もし、『逃げる』という言葉が駄目なら、『戦略的撤退』だ。勝てない戦は戦わない。
それでいいじゃないか。ゲームだってみんな逃げてるよ。ドラクエだってファイナルファンタジーだって『逃げる』というコマンドがある。明らかに敵が強い、味方が瀕死の状態である等、こちらが不利な場合には逃げるのも一つの手なんだ。しかもゲームでは死んだところで、セーブ場所に戻るだけ、もしくは教会で有り金を半分にされてやり直すだけだが、現実はそうではない。
ただ、命が亡くなってしまうだけなのだ。そんな悲しい事はない。親も先生も友達も助けてくれないのなら警察にでも逃げよう。役所でもいい。それこそ図書館でもいい。
『自分はいじめられている』そう伝えるべきだ。
ネットが使えるならいじめ問題の相談に乗ってくれる人もいるはずだ。自分一人でどうにもできないのならば遠慮なく他人の力を借りるんだ。死ぬことはない。生きるんだ。
僕はいじめを受けたことがない人間だから偉そうなことは言えない。なので「未来は明るいよ」と軽はずみには言えない。でも、「そこではない違う世界があるよ」というのは間違いのない事だと思う。
これはニートやひきこもっていてなかなかそこから抜け出せないような人にも言えるのかもしれない。「明るい未来は保証できないが、今とは違った世界は確実にある」のである。
ただ、命がなければその世界を見る事は出来ない。それは悲しいし、もったいない。だから死んではいけない。違う世界に逃げるんだ。おじいちゃんやおばあちゃんがいるのならそっちに逃げてもいいじゃないか。親戚がいるならそっちに行ってもいいじゃないか。
死ぬことに比べたら逃げる事なんてマイナスでも何でもない。
僕が言いたいのはそれだけ。
「死ぬことはない。逃げろ!」
もし、今死というものを考えている若い人がいるのならば、冒頭で紹介したお二人の言葉を見てほしい。そして、違う世界があることを認識してほしい。そして、死ぬな。逃げろ!