今年の4月にコロナにかかり、「味覚障害になっちまったよぉ」とこのブログに書いた。まぁ、診断を受けたわけではないので、断言はできないのだけど、明らかに食事をした時の臭いや味が感じにくくなっていた。文字通り「味気ない日々」ってやつだ。
そんなこんなでしばらくは食を楽しむなんてことは出来ず、食事は腹を満たし栄養を摂取するための作業と化していた。飯を食うたび「味気ねぇ」と呟く日々。何かを味わうことが、日々に彩りを与えてくれていたのだと痛感させられていた。
そして、数ヶ月。季節は春から夏になった。
「味覚復活ッッ!!」
僕はすっかり味覚を取り戻していた。食べるもの全てにきちんと味がある。噛むと口の中にブワッと広がる食べ物の個性。ジャンクなものを食べて「味濃いなぁ!」と言えるようになることが嬉しい。
味覚が回復したことを確信した僕はまるで漫画『刃牙』にて、主人公の刃牙が毒から回復したことを喜ぶ烈海王のごとく「味覚復活ッッ」と連呼していた。(もちろん心の中で)
味覚を回復するためにやったことといえば、人からすすめられた亜鉛のサプリを摂取していたことぐらいだ。人によってはコロナの後遺症が1年経っても、あまり改善されないなんてことも聞くので、おそらく僕の症状は軽症だったのだと思う。ただただ運が良かったとしか言えない。
その一方で今も多くの人が、コロナの後遺症で苦しんでいることを考えるとやはり胸が痛む。以前にもX(旧ツイッター)で触れたかもしれないが、コロナの後遺症で味覚を失った飲食店の店主が、店をやめざるをえなくなったというニュースが今も僕の心に残っている。
https://mainichi.jp/articles/20240508/k00/00m/040/026000c
話題にならないだけで、あるいは本人が口に出していないだけで、きっとまだ多くの人が苦しんでいるに違いない。そう思うと、自分が良くなったからそれで良しとは思えない。
僕はつい調子にのってしまったり、自分の喜びを優先させてしまう人間だが、改めて目の前のわかりやすい事象にだけ目を向けるのではなく、隠れた他者の痛みや苦しみを少しでも想像できたらと思う。