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日記から読んだ本や映画の感想、時事問題まで綴るブログです。弱者の戦い方、この社会がどうあるべきかも書いていきます。

『画家と泥棒』予想もつかない展開!これぞ予定調和なしのドキュメンタリー!

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Amazonプライムにたまたまあったので、リストに入れておいたドキュメンタリー映画『画家と泥棒』。舞台はノルウェーです。ある画家が描いた2枚の絵が2人の泥棒に盗まれます。泥棒は絵の行方を覚えてないと語り、盗まれた絵は見つかりません。その泥棒のうちの1人に対して、肖像画を描きたいと提案する女性の画家と泥棒の男の交流をカメラが追うというものなのですが、これが観ているうちになかなか心を揺さぶられてしまったので、ちょろっと紹介しておきたいと思います。

 

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ドキュメンタリーなのかと疑ってしまうぐらい、すごいシーンが撮れてしまう!

本作はドキュメンタリーです。ドキュメンタリーなので、基本的に映像は撮影したものの中から使うことになります。もちろん、制作側は撮ったものをそのまま使うわけじゃありません。編集して特に印象的な部分を出したり、時系列を多少入れ替えたりします。ドキュメンタリーといっても、必ず作り手の意図がそこにはあるわけです。

 

とはいえ、それはあくまで撮影した映像の中での範囲に限ります。ですから、いくら編集しようとそもそもの素材の映像が面白くなければ、作品自体を面白くすることも難しくなります。

 

で、この『画家と泥棒』という作品なんですが、もうね素材そのものがすごいんです。ほんとにドキュメンタリーなのかって言うぐらい、展開が読めないしすごい映像が撮れちゃってます。

 

その代表的なシーンが、画家が泥棒の男を描いた絵を初めて見せる場面です。まだ未完成ではあるんですが、その絵がとても緻密でリアルなんですね。で、それを見た男のリアクションですよ。目を見開き驚きの表情を見せ、その後、彼のところだけ数秒間時が静止したかのよう。そして、声をあげてボロボロと泣き出すんです。

 

僕はこの時、なぜ彼が泣いたのかを考えました。すごいアートを目にした時には、言葉にできない感情の揺らぎがあります。それが彼に涙を流させたのかもしれない。でも、きっとそれだけじゃない気がするんですね。多分、彼は自分をしっかり見てもらえたことが嬉しかったのではないかと。これはどういうことか。

 

男は泥棒をしたり、薬を買ったりとチンピラではありますが、決して凶悪な人間ではありません。画家とのやり取りも結構しっかりしてるし、ユーモラスな部分もある。すごく善い人でもなければ極悪人でもない。多分、僕たちと同じなんだと思います。でも、彼はカメラの前で「自分は必要とされていない」と言います。非常に孤立した状態だったんですね。

 

必要とされていないとはどう言うことか。それは、「誰からも見てもらえない」「誰からも気にかけてもらえない」ということではなんだと思うんです。社会に味方はおらず、一人でポツンとたたずんでいる。彼はそんな心境だったのではないでしょうか。

 

そんな彼のことを画家はしっかり見ていました。それが彼を描いた肖像画によく現れている。絵を描くという行為を通じて、彼を見ている、彼を知ろうとしてくれている。これだけしっかり見てくれたというのを、自分の肖像画を見て思わぬ形で突きつけられた。それが喜びの涙なのか、あるいは悲しみを癒してくれるものなのか判断はできません。でも、確実に彼の琴線に触れた。だから、彼は人目をはばからず涙を流したのではないでしょうか。

 

そんな彼の涙を見て、彼の抱える孤独感を垣間見た気がして、僕も思わず涙を流してしまいました。まぁ、これは僕の想像でしかないので、彼の涙をどう捉えるかは観ている人次第だと思います。ただ、とにもかくにもあの表情、間。演技では出せないであろうあの場面は心を揺さぶられるすごいシーンだったと思います。

 

他にも画家や泥棒に起こる予想外の出来事。行方不明になった絵の行方、ラストの場面など「これほんとによく撮れたなぁ」という展開の連続です。最後もこんな終わり方!?とびっくりしちゃいましたもん。まさに事実は小説よりも奇なりという言葉がピッタリの事実が収められた作品だと思います。

 

作りもののフィクションも楽しいですが、たまにはドキュメンタリーも楽しいですよ!興味がある方はぜひご覧になってみてください。

 

参考

画家と泥棒 - MadeGood