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『JUNKHEAD』というすごい映画について

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先日、アマゾンプライムで『JUNKHEAD』という映画をみた。これがとても良かったので紹介したい。

 

Amazon.co.jp: JUNK HEAD(字幕版)を観る | Prime Video

 

本作は2021年3月に公開されたストップモーション・アニメ映画だ。ストップモーション・アニメは1コマずつ物を動かしてカメラで撮影し、それを繋げることで連続的に動いているように見せている。有名どころだと『ナイトメアービフォア・クリスマス』など知っている方も多いのではないだろうか。

 

『JUNKHEAD』の物語もキャラクターもとても僕好みなのだが、何よりも驚かされるのはその制作背景だ。なんとこの作品は監督である掘貴秀さんが、独学で7年かけてほぼ1人で作ったという狂気じみた作品なのだ。

 

1人でアニメーション作品を作った人といえば『君の名は』や『天気の子』の新海誠監督が有名だが、掘さんはその新海監督が1人で作品を作ったという話を聞いて「それなら自分も作れるかも」と思い、全く映画作りなんかしたことがないいわば素人の状態から始めたとのこと。

 

ストップモーション・アニメは1秒につき12〜24枚程度使うと言われている。(必ずしも決まってはいない)10秒なら120〜240枚。一つの動作を表現するため、1枚ごとに少しずつ物を動かしていく。それも、1箇所動かすだけならいいが、例えば人が歩くという動作の場合、手足も同時に動くわけだから何箇所も動かし、それがスムーズに動いているように見せていかなければならない。さらに、別の登場キャラクターがいて、同時に何か行なっていたとしたらそちらも動かして…。あぁ、書いているだけで気が遠くなるような作業だ。

 

そんな、手間ひまがかかることを堀さんはたった1人から始め、ほぼ1人で実際に作り上げてしまった。それは圧倒的な情熱、いや狂気じみたものが堀監督の中にあったとしか言いようがない。そんな特別な作品がこの『JUNKHEAD』なのだ。

 

話自体はディストピアだし、ちょっとグロいシーンなんかも出てくるし、キャラクターの造形は不気味(いい意味で)なので、苦手な人もいるかもしれない。だが、ストップモーションアニメで動くキャラクターはどれもとてもユニークだし、映画を観ていくうちに、この独特の世界観に引き込まれていく人は多いと思う(僕もその1人だ)。先入観に捉われずぜひ見てほしい。

 

1人で何かを作りたい人にぜひみてほしい

作品自体もそうだが、この作品は「これから何かを作ろうとしている人」「今何か作っているけどなかなかうまくいかない人」にオススメだ。

 

1人で何かを作るのは孤独なものだ。ましてや、堀監督のように全くの素人から始めるとなればうまくいかないことだって多いだろう。なかなか成果が出にくい、うまくいかなくて挫折してしまいそうになることもあるはずだ。初めは人から見向きもされないかもしれない。では、堀監督はどうだったのか?そう、多くの人と同じように色々なことに手を出してはやめてしまうという経験をしている。

 

やめたらおしまいだと思っていたので、とりあえず必ずやりきると決めていました。今まで色々なジャンルに手を出しては、全て中途半端に終わっていたんです。どのジャンルにもすごい人がたくさんいるのに、今さら自分が頑張ったところでしょうがないと考えてしまっていたんです。でも、今までやってきた色々な経験を組み合わせれば、映画を作れるんじゃないかと思い、これを実現できれば、誰も真似できないものを生み出せるかもしれないと信じて、なんとか頑張りました。

引用元:世界で絶賛されたSFストップモーションアニメ『JUNK HEAD』堀貴秀監督の狂気の才能と情熱を聞く | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス、閲覧2022年9月7日 

 

「どのジャンルにもすごい人たちがたくさんいるのに、いまさら自分が頑張ってもしょうがない」という感覚は、僕も身に覚えがあるし、読者の中にも当てはまる人がいるかもしれない。今はネットやSNSでいくらでも各ジャンルのすごい人たちを見つけることができる。初心者がいきなりその業界の第一人者の仕事を目の当たりにして自信を失ってしまう。今の社会は容易に比較ができてしまう分、初心者の心を折りやすいと言えるだろう。

 

だが、堀監督はそうした挫折を乗り越える考え方も示している。自分の経験を組み合わせてオリジナルのものを作るという発想だ。確かに世の中にはすごい人たちがたくさんいるが、彼らが自分と同じ経験をしているわけではない。それを組み合わせれば自分の武器となる可能性を秘めている。すごい人たちとはまた違うオリジナリティのあるものが生み出せるかもしれない。堀監督はそこに注目し、自分の経験を活かすことでこの作品を作り上げたというわけだ。

 

そういう点でこの『JUNKHEAD』は、これから何か作ろうとしたり、今まで色々なことを始めては挫折してきた人にとって、道標のようなあるいは希望のような作品になるのではないだろうか。堀監督が新海誠監督に刺激され作品作りを始めたように。

 

たとえ短時間では無理でも、時間をかけ手間をかければ何かを完成させられるかもしれない。長年、自分の中にあった「何か」を表現することができるかもしれない。そんな前向きなメッセージを、堀監督が描いたディストピアな世界や愛嬌たっぷりの不気味なキャラクターからそんなことを感じることができるだろう。

 

それでもきっと僕らは何度も挫折する。その度にこの作品を見返してほしいなと思う。

 

最後に

今回は掘貴秀監督の『JUNKHEAD』について書いてみた。その制作背景については色々なところで監督がインタビューに答えているので、興味があればぜひそちらも見てほしい。

 

ちなみにこの作品は3部作構想だそうで、監督の中ではしっかり続きができているとのこと。掘貴秀監督は次回どんなものを見せてくれるのか。次回作も期待しながら待ちたい。

 

参考

映画『JUNK HEAD』 公式サイト

孤高のクリエイター・堀貴秀が『JUNK HEAD』誕生秘話を語る - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)

世界で絶賛されたSFストップモーションアニメ『JUNK HEAD』堀貴秀監督の狂気の才能と情熱を聞く | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

『天気の子』新海誠のルーツにあるMacと若者へのメッセージ〈新海誠インタビュー01〉 | flick!