不登校という言葉が一般的になって久しいですが、まだまだどちらかというとネガティブなイメージでとらえられることの方が多いのではないでしょうか?そして、今も不登校でいる自分を責めてしまったり、あるいは家に不登校の子供がいて、「どうやって接していけばいいのかな」と考えている家族の方もいるはずです。
で、僕も不登校ですとかひきこもりなんかの本をそれなりに読んだりしてきましたが、正直「こうすればいい」という正解はない気がしています。だからこそ、本人も家族の方も「どうすればいいのだろうか?」と悩んでしまうのかもしれません。
ただ、ヒントになるものは世の中にたくさんあるとも思っています。今回僕が読んだ『居場所がほしい 不登校生だったボクの今』という本もそのうちの一つです。
著者の浅見さんは、中学生の頃に1年半不登校を経験した方です。現在は、その時の体験をもとに、講演をしたり取材をするなど積極的に活動を行っています。
本書はその浅見さんが不登校になるきっかけの話や、不登校の時に何を考えていたのか、不登校から抜け出すきっかけは何だったのかを知ることができる一冊です。
不登校の人はもちろんのこと、その家族や教師、支援者など不登校に関わる人にとってヒントになる内容が書かれています。
不登校の人の気持ちを知ることができる
不登校になるきっかけは様々だと思います。人間関係がうまくいかない、勉強についていけない、喧嘩した、怖い先生、生徒がいる、学校が楽しくない、なんとなくなどなど人によって原因は様々でしょう。もちろん、その原因を取り除くというのも大事なことではあると思います。
ただ、個人的により大事だなと思うのは「不登校の人の気持ちを知る」ってことだと思うんですよね。何が嫌なのか?どうしたら気持ちが楽になるのか?どういう時に行動したいと思うのか?といったことを知ることは、家族や支援者の人などが知っておくべき知識だと思うからです。でないと、良かれと思ってやったことが本人の気持ちを傷つけてしまうかもしれない。
例えばこの辺りの部分は読んでいてとても興味深いです。
親としては「どうすればこの子が、また学校に通えるようになるか」を考えていたのかもしれません。けれど、ボクとしては、「どうこの状況を解決するか」を親に求めていたのではなく、「大丈夫?何かつらいことでもあった?」「無理して話さなくてもいいけど、お父さん、お母さんは、あなたの味方だからね」というひと言をほっしていました。
引用元:『居場所がほしい――不登校生だったボクの今 』p11 著者 浅見 直輝 岩波ジュニア新書
解決策よりも安心させてくれる言葉がほしい。これは不登校の人じゃないとわからない感覚だと思うんですよね。大人側からすると、つい駆け足で解決策を探してしまうし、それが正しいと考えてしまいがちです。でも、子供からすればまずは安心感を与えてほしい、ここにいてもいいんだよという居場所がほしいということだと思います。
考えてみると、不登校になる人というのは少なからず精神的に疲れているんですよね。でないと、今まで行けていた学校に行けなくなるということはあまりないはずなので。何かしら精神的にダメージを負っている可能性がある状態で、学校に行くというのはとてつもなくハードルが高い。なので、まずはしっかりと休ませて安心させてあげるのが大切なんだなというわけです。
ただ、著者の浅見さんの家ではそういうわけにもいかず、やがてご両親が喧嘩をしてしまうんですね。で、両親の喧嘩している姿を見ているうちに、物事をすべてネガティブに捉えるようになった浅見さんは、自分を責めるようになってしまうんです
この感じ僕もわかるんですよね。っていうのも僕もあんまり家からでれない時期がありましてね、その時はよく自分を責めてたんです。まぁ、その時に親がガンガン喧嘩していたかどうかは忘れてしまいましたが、何か言われるたり、何か出来事があるたびに物事をネガティブに捉えて、何もかもを自分を責めるための材料にしてしまっていた気がします。これは結構つらいんですよね。
もちろんね、まったく喧嘩をするなというのは難しいことだと思うんですよ。ご両親はご両親で互いへの不満もあるだろうし、子供への不満もある。また、「これからどうなるんだろうか?」と不安にもなるだろうし、ストレスもたまるわけで、ついぶつかってしまうこともあるでしょう
ただ、その様子はちゃんと子供にも伝わっていて、少なくとも精神面にいい影響を与えないということは知っておいてもいいかもしれません。
個人的には親御さんは親御さんで相談できる場とか、気持ちを吐き出せる場があるといいのかもしれないなと思いました。
不登校から抜け出すきっかけを知ることができる
で、やっぱり一番知りたいのは「どうやって不登校から抜け出すのか?」ってところだと思うんです。まぁ、ただねこれは正解がないというか人それぞれなんじゃないかなとも思うわけです。
A君が体験したことがB君にとってもいいのかというと、そこはまた何とも言えません。ただ、色々な事例を見て「こういうきっかけで戻れることもあるんだな」ということを知っておくだけでも、不登校の人もその家族も支援者もだいぶ気持ち的に違うんじゃないかと思うわけです。
では、浅見さんの場合は一体どうやって不登校から抜け出したのでしょうか?そのきっかけを本書に書かれてあった順番で簡単に並べてみます。
- ゲームにハマっていてそのゲームの限定デザインのお菓子を買うためにコンビニぐらいまでなら出かけられるようになった
- 卓球が好きで「学校に行かなくなった子供たちが集まる居場所」に卓球場があったので、そこに行くようになった
- その場所で女性相談員鈴木さんとの人との出会い。女性は浅見さんに安心感を与えるように接してくれた。そして学校に通っている自分ではなく、そのままの自分を相手にしてくれた
- 親も安心感を与える言葉をかけてくれるようになった
- 同級生から「待ってるよというメール」が届いた
- 親との関係性が改善され家にも居場所ができ、鈴木さんとも接することで家と学校以外にも居場所ができた。そして、同級生からのメールのおかげで「学校にも居場所がある」と思えるようになった
こう見ると、まず再現性はないですよね。そして、みんながみんなこうすればうまくいくというわけでもないとは思います。ただ、何度もいうようにヒントになることには間違いありません。なぜなら、浅見さんはこうやって不登校から抜け出していったからです。
で、この中でいくつか特徴を挙げるとすれば「外に出ていくきっかけなんて何でもいい」ってこと「一気に解決したわけではなくて段階を踏んで少しずつ状況が変化したこと」と「安心感や居場所を与えることが大事である」ということなのかなと思います。
まずきっかけですね。これはほんとに何でもいいと思います。浅見さんがお菓子がきっかけで外に出て、卓球場がきっかけで相談員の鈴木さんのいる場所まで出かけたように、本が読みたいから本屋に行くでも、何かのイベント見たさでもいいわけです。家に出なくなると、ほんと家から出ることすらおっくうになりますからね。なので、どんなくだらない理由でもいいので家から時々出るようにしてみる。
で、やはり一気に解決しようとするのはNGなのかなと。特に親とか家族の方が「早く家から出さなければ」とか「学校に行かせなければ」と思う気持ちは十分にわかりますし、学力のことや、進学のこと、また将来のことなど色々と考えてしまうものなのでしょう。でも、焦って無理に学校に行かせようとしたり、強い言葉をぶつけてしまえば子供は自分を責めてしまうことにもなりかねません。
浅見さん自身も本書の中でこんな風に書いてます。
とはいえ、急に全てがうまく回りだしたなんてことはありません。鈴木さんのいる場所に行くことすらもやっぱり怖くなってきてまた引きこもったり、昼夜逆転の生活に戻ったりして、その度に家族の気持ちが沈んでいきました。外出が怖い気持ちも、すぐには消えず、「え、また逆戻りしちゃうの‥‥‥?」と親を不安にさせたことも一度や二度ではありません。そんなことを、何度も何度も繰り返しました。
引用元:『居場所がほしい――不登校生だったボクの今 』p33
三歩進んで二歩下がるではありませんが、必ずしもスムーズに事が進むわけではないと頭に入れておいた方がいいのかもしれませんね。その方が焦りにくくなる気がします。
あとは、安心感と居場所。読んでいて思ったのは、「人はやはり居場所を求めるものなのだな」と。で、その居場所が安心できて自分を受け入れてくれると感じられるのであれば、その場所に行く可能性が高いし、逆に受け入れられなかったり、自分にとって不安を強く抱いてしまうような場所に人は行きにくいんだろうなと思うわけです。
この辺は不登校だけじゃなくてニートとかひきこもりとかも近いものがあるんじゃないかな?外に出ることや働くことに対して、不安感が強い、自分の居場所と感じられない。だからなかなか一歩が踏み出せないこともあるんじゃないかと。
なので地域も、学校も、職場も、その他のスペースもいったんドロップアウトしたり立ち止まった人間に対して「安心していいんだよ」っていう居場所を提供できれば、一歩踏み出せる人はより増えてくるのではないかなと思っています。
まとめ
今回は『居場所がほしい 不登校生だったボクの今』という本を読んだ感想を書いてみました。
必ずしもこの本にすべての人に当てはまる不登校からの抜け出し方が書いてあるわけではありません。ただ、不登校の人の気持ちや、考え方など、不登校について考える上で参考になる部分はたくさんあるはずです。
そして、なんといっても不登校だった著者が積極的に活動している姿を知ることで、今不登校で悩んだていたり、これからどうしようかと考えている人に何かの気づきを与えてくれると思うので、興味がある方はぜひ一度ご覧になってみてください♪