癒しなし答えなし「絶望ラジオ」が始まります
これは、韓国のインターネット番組「絶望ラジオ」のオープニング。
パーソナリティはボランティアの若者たち。
生活の厳しさ、学業の悩みなどなどリスナーの人たちからの絶望的なお便りを紹介してパーソナリティたちがそれにコメントしていく番組です。
リスナーからの便りにはネガティブなものが多いですね。さすが絶望ラジオだけあって自分の生活や将来のことに対して絶望していたり諦めている若者からの便りが多い。送られてくる内容は「受験勉強」「就職活動」「貧乏」「格差」などに対する悩みがほとんどです。
僕、たまにブルーレイレコーダーの予約機能で色々なジャンルの番組を検索するんですね。今回は多分「若者」って検索したと思うんですが、そしたらこの「絶望ラジオ」っていう文字が目に飛び込んできまして、「えっ?なにこれ?」みたいに興味をひかれちゃったんですよ。すごいラジオだなってね。
それで、番組録画予約して見てみたらいきなりこの記事の冒頭の文言をラジオのパーソナリティーが語ってるんですよ。「こんな出だしのラジオある?」って感じですよね。そっから一気に番組を見てしまいました。
淡々とリスナーからの便りを紹介
絶望ラジオの特徴はパーソナリティがリスナーからのお便りを淡々と読んで距離感をとったコメントをするだけ。別に励ましたりしないんですよ。なんか熱いパーソナリティーとかだったら「頑張れよ!!」とか「応援してるぜ!」みたいな熱量のこもったコメントの一つや二つしそうなもんじゃないですか。アッチチみたいな。
でも、そういうコメントが一切ないんですよね。別に励ましもせず慰めもせず淡々とリスナーの便りを読み続ける。それが絶望ラジオなんです。
なぜ慰めたりしないのか?
この絶望ラジオの編集長をやっているい人にこんな質問をしてたんですよね。そしたら編集長がこんな事を答えていたんです。
「投稿した人に同情や慰めの言葉をかけてしまうと本当にその人は絶望してしまう。プライドが傷つき自信を無くしてしまう。」
なるほど。そういう考え方もあるのか。確かに慰められた瞬間に「慰められたかわいそうな自分」と思ってしまう人もいるかもしれない。よけいなアクションをせずただ思いを聞くっていうのも大切なのかもしれない。
番組が始まった当初、絶望ラジオが目指すべきものは「あくまで若者たちの思いを聞く番組」であるというものでした。何か解決策を提示したりとか助けるっていうわけではないっていうものだったんですね。
ただ、絶望ラジオもこの番組中に厳しい環境にある若者たちの関心のある出来事についてはどしどし紹介していくというスタンスに変化していきます。役に立つような情報の発信もしていくんですね。絶望ラジオの編集長も「ただリスナーの思いを聞く以外にもできる事はないのか?」と考えたのかもしれません。
あるリスナーの一日
韓国は日本以上の競争社会です。リスナーの若者たちからの投稿からもその厳しさを伺えました。
番組ではリスナーの一人29歳の男性の生活を取材していました。彼は地方から公務員を目指してでてきたそうです。生活のため深夜と昼間に2つのアルバイトを掛け持ちする日々。生活はそれでもギリギリです。
寝起きするのは若者たちが利用する、通称考試院(コシウォン)と呼ばれている格安のベッドハウスです。彼が住んでいる部屋の広さは2畳ほどで簡素ですが家賃が安く人気。そこにあるのは小さなベッドと机のみ。そして、動画で勉強するためのPCがあるぐらいです。
ソウルにはそういったベッドハウスが6000件あり、若者はそこに50万人くらしているそうです。
つまり、それだけ生活が苦しい若者が多い象徴とも言えるでしょう。そのため生活苦から犯罪を犯す人も出てきているとのことです。
話を先ほどのリスナーに戻しますが、このリスナーの日常はとにかく毎日が同じ日々の繰り返しでした。
- 深夜バイトを終えて就職のための受験勉強をし就寝。
- 起きたら就職予備校に通い勉強。
- 勉強が終わったら昼間のバイト。昼間のバイトが終わったら少し運動などをする
- また夜のバイトに向かう。
- 1に戻る
という感じです。地方から受験のために出てきているため友達も恋人もおらずほとんどしゃべることがない一日を送ることもあるそうです。
ちなみに下級の公務員試験は100倍の競争率。公務員は福利もいいから人気で有名大学の学生なども受験するため競争率はかなり高くなります。とんでもない競争に勝ち抜かなければなりません。
リスナーの方はその競争に勝ち残ることができず、大学卒業から上京して気づいたら29歳になっていたとのこと。親からの仕送りは一切なし。試験に受かるまで実家には帰らないと決意をしているそう。すんごい孤独な日々ですよね。果たして彼の努力が報われる日々がくるのかどうか‥‥‥。
このリスナーはイさんというのですが、彼にとって1日の終わりに聞く「絶望ラジオ」が唯一と言っていい楽しみだそうです。
深刻な就職難
中国への輸出に頼ってきた韓国経済は苦境に立たされています。番組を撮影した当時は中国経済の失速などで輸出が激減。財閥の利益もかなり減ってしまっているそう。失業率は13%で大卒の若者で正規の職に就けるのは3人に1人。
厳しいなぁ‥‥‥。これじゃあ、若者が絶望するのも無理はないのかもしれません。どう頑張ったって3人中2人は非正規の職になってしまうわけですからね。僕なんて間違いなく正規にはなれない‥‥‥。
絶望感を強める若者に何ができるのか?
さすがにこの状況には行政もマズいと思っているらしくソウル市はある取り組みを始めます。若者たちが集まることができる場所づくり。通称「青年ハブ」と呼ばれる場所をつくったそうです。
ハブっていうのは空港のハブ化なんて言葉がありますが、まぁ「拠点化」みたいなイメージかな?若者の拠点となる場所を作ろうというのがソウル市の取り組み。
この青年ハブでは市から補助金が出て集まりやサークル活動ができるとのこと。社会の中で居場所を見つけにくい若者が何かに出会える場所としての役割を期待されています。利用者は1年間で述べ10万人。結構な数の若者が利用しているようですね。そんだけ居場所がない人が多いんだなと感じます。
僕も社会から孤立した人たちや居場所がないなーと思っている人たちに対しての居場所づくりってすごく大事だと思うんですよね。最近だと家入一真さんの「リバ邸」みたいな取り組みもあったし、シェアハウスを自分たちで運営して居場所づくりをしている若者たちも多い。
孤立→絶望っていうパターンに陥らないためにも「居場所を作る」っていうのはとてもいい試みだと思います。うまくいかない状況でも居場所があれば頑張れたり立ち直れたりしますからね。たすけてもらうことも出来るはずです。
逆に「この社会のどこにも居場所がない」ってなると自分から死を選んでしまったり犯罪に走ってしまったりするんじゃないかな。「自分の居場所がない社会なんてどうでもいい!!」っていう思ってしまう絶望感は十分想像できます。
日本でも韓国でも居場所があるのが大切っていう考えは変わらないんだなと番組を見ていて思いました。社会から孤立しない、絶望感を抱かなくて済むような居場所づくりが大切ですね。
実際この青年ハブでネットワークを作って事業を作った人もいるそうです。人と人とがつながることで、何かが生まれるかもしれない、そんな可能性を感じさせてくれる話でした。
どんな人にも居場所がある社会へ。
一度社会からあぶれたような形になると、「自分は孤独だ」と感じてしまう事が少なくないです。僕も一時期は「自分はこの社会には必要のない存在なんじゃないか」と悩んだ時期がありました。
でも本来誰にでも居場所はあっていいはずです。正規だろうが非正規だろうがフリーランスだろうが、学生だろうがニートだろうがひきこもりだろうがなんだろうがです。居場所があって自分が社会にいてもいい、そう思えたらもっと多くの人が生きやすくなるんじゃないかな。
番組の最後に絶望ラジオのリスナーからのこんなメッセージを紹介していました。
「頑張れない人でも居場所のある社会にしたい」
僕はこの言葉にすごく説得力を感じましたし、希望を感じました。
頑張れる人でも頑張れない人でも居場所はあっていい。でも今は頑張った人にだけ居場所があるように感じている人が多いんじゃないでしょうか?
頑張って勝った人だけに居場所があるなんて何かおかしい気がしますよね。勝てば居場所があるけど負けたら居場所はないんだなんて辛すぎるじゃないですか。それこそ弱肉強食みたいな世界。
でも僕らは人間なわけで弱い人、頑張れない人、勝てない人がいるっていうのを分かってるわけですよ。はたしてそういう人を切り捨ててもいいものなのか?はたまたそうじゃなくて弱い人やうまくいってない人でもやっていけるような社会にしていくのか。
日本も韓国も含めこれからこういう事はどの国でも考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思いました。そしていつか「絶望ラジオ」がその役割を終えるような社会が来ればいいなと思っています。僕もちょっとずつできることからやっていきます。
僕も「ニートラジオ」でもやろうかなー(笑)
それでは今回はこの辺で!
最後までご覧いただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!