オバログ

日記から読んだ本や映画の感想、時事問題まで綴るブログです。弱者の戦い方、この社会がどうあるべきかも書いていきます。

『歌集 滑走路』の感想

ご存じない方も多いかもしれませんが、最近ポツポツと歌詞を書き始めました。自分が作詞をしていて思うのは、語彙だったり感情表現の仕方だったり、もう何もかもが足りないということ。通り一辺倒というんでしょうか、「あぁ、またおんなじような表現になっちゃった!」みたいなことが結構あるんですよね。

 

そう考えると多彩な歌詞を書く作詞家さんやシンガーソングライターだけではなく、アマチュアであっても心に響くような歌詞を書ける人はすげぇなぁと日々思うわけです。この辺はやっぱりやってみないと実感できなかったことなので、作詞始めてよかったなぁと思っています。

 

とはいえ、僕も「はぁ、みんなすげぇなぁ…」と指をくわえているだけではなく、やるからにはプロは到底無理にしてもせめて少しはレベルアップしたいぞという思いがあり、そのためにどうすればいいのかを考えました。で、とりあえずの結論としては「もっと色々な言葉に触れていかないとなぁ」と思うようになりました。これまでも読書はしていましたし、たくさんの言葉に触れては来ていましたが、どちらかというと知識を得るためのものであり、その言葉、文章で人物の心情や背景を描写したり、グッと心を掴むフレーズみたいなものに触れる機会は少なかったんじゃないかと。

 

それで最近は作詞をしつつ、色々な曲の歌詞を見返してみたり、人生で初めて詩集のようなものまで読んでみたりして、自分の表現の幅を広げようとヒーコラしているわけです。

 

で、今回紹介するのはその過程でたまたま見つけた一冊。萩原慎一郎さんの『歌集 滑走路』です。

 

本書は著者である萩原慎一郎さん唯一の歌集です。というのも、彼は2017年に32歳という若さでこの世を去っているんですね。つまり、これは彼にとっての遺作ということです。

不安を抱える若者の想いを見事に表現

僕はこの歌集がバシバシ心に響いたんですね。非正規で仕事も恋愛も決して順風満帆とは言えない若者が抱えるうっすらとした不安や焦燥感を如実に描き出しています。僕自身も、何かこう水中に身を置くような息苦しさを、人生において日々感じているので彼の歌に共感するわけです。

 

ただ、やっぱり何よりも言いたいのは、萩原さんの歌は暖かく優しいってことなんですね。ご自身がさまざまな葛藤を抱えながらも、その歌には自分と同じような状況にいる人を、そっと後押ししエールを送るようなメッセージが込められている。そこに僕は感動を覚えました。

 

しかも、そのメッセージが決して押し付けがましくない。「とにかくポジティブで」というような、その人の人生の過程をすっ飛ばしたようなものではなく、不安、葛藤、悲しみなど、どちらかといえばネガティブに捉えがちなものから目を逸らさない。その上で、絶望に沈み込むのではなく、そうしたものを抱え、押しつぶされそうになりながらどうにか希望を胸に生きていくんだという彼の想い。それが彼の歌からじんわりと伝わってきて、僕はもう素直に共感しました。そして「この本の素晴らしさを伝えたい」と思い、今こうしてブログに書いているわけです。

 

必死に生きた姿は誰かの心を打つ

萩原さんは32歳という若さでこの世を去りました。この本には「命を絶ち」と書かれていますので、自死ということだと思います。ただ、彼の想いは彼の歌集を通じてこの世に残り続け、こうして僕を始め読者の人たちの心に火を灯してくれている。彼が不安や葛藤を抱えながら必死に生きようとした日々は、誰かの日々を後押ししています。

 

それだけに本当に惜しい。彼が今も生きていたとしたら果たしてどんな歌を詠んだのか。誰かの心に寄り添う優しさと希望の歌が、より多くの人に影響を与えたのではないだろうか。僕はこの歌集を読むたびついそう思ってしまいます。

 

決して強い言葉で誰かを煽るような内容ではありません。繰り返しになりますが萩原さんの言葉は暖かく優しい。でも、その言葉はきっと今足掻きもがいている人、目に見えた行動には移せなくても心の中で自分の弱さや葛藤と戦っている人に、力を与えてくれるはずです。まだ、読んだことがない人は是非一度読んでみてください。