「ない仕事を作るとはどういうこっちゃ??」
この本のタイトルが利用している図書館の予約サイトで表示されたとき僕はこう思いました。
見てみると、作者はあのみうらじゅんさん。『マイブーム』や『ゆるキャラ』の仕掛人として何だか面白そうなことをいつもしている人。
「こりゃ、読んでみるしかないなー」という事で予約をし、ついこの間予約が僕の番になったので読んでみました。意外と早く読めてよかった。今回はこの『ない仕事のつくりかた』という本の感想を書いてみようと思います。
ない仕事のきっかけはマイブーム
元々、みうらさんは自分が「これは面白い!」と思ったものや事柄に目をつけ、現k能を書いたり、発言をしてきたリしてきたのですが、世の中の話題にならないことの方が多かったとのこと。
ここで、普通なら「まぁ、自分が好きだからそれでいいかなー」位に思って終わってしまいますよね?ところが三浦さんは違うんです。
「だったら流行るかどうかをただ待つのではなく、こちらから仕掛けていこう」
という発想に至りました。私(みうら自身)の流行を、世の中に広めていく。本来これが「マイブーム」の本当の意味だったのです。
今でこそ僕らも「マイブームは○○です」なんてことを言いますが、このマイブームという言葉は本来であればないはず言葉なのです。
何故かというとブームという言葉の意味は『多数の人が同じことに夢中になる現象のこと』を言います。それに対してマイという言葉は『私の』という意味です。
そのため、本来であればこの二つは結びつくはずのない言葉なのですが、みうらさんがこの言葉を生み出し使用する事で、『マイブーム』という言葉自体が世間一般で利用されるようになりました。それどころか最終的には流行語大賞を受賞し、広辞苑にも掲載されてしまったほどなのです。
自分だけで使っていて本来であれば『ないはずの言葉』世間に広がっていったこの現象が、みうらさんの『ない仕事の作り方』に繋がっていくというわけなんですねー。いやぁ、非常に興味深いです。
一人電通という考え方
みうらさんが『マイブーム』を広げるために行っている戦略を、ご本人は『一人電通』
と呼んでいます。
これは、つまり一人で広告代理店をやってしまおうという考え方なんですね。ネタを考えるのも自分。ネーミングも自分。デザインや見せ方も自分。発表するのも自分。編集者やイベンターを接待し、ネタが多くの人に触れるようにしていくのも自分。
クリエイティブなことから戦略、営業といった部分まで全て一人で行うこと。それが『一人電通』という考え方なんです。なかなか真似できるものではないかもしれませんね。多才な人じゃないとなかなか‥‥‥。ただ、発想は凄いです。ほんと。その発想にまずならんもん。
ない仕事の出発点
みうらさんの場合、名もなき地方マスコットとの出会いがのちのない仕事の出発点となります。
他の人ならスルーしちゃいそうなこのマスコット。せいぜい、「なんだありゃ?」と嘲笑する位のものでしょう。ですがみうらさんは違いました。
名称もジャンルもないであろうそのマスコットに名称とジャンルを与えたのです。
これがブームとなった『ゆるキャラ』の誕生に繋がっていきます。
『ゆるキャラ』は『ゆるい』+『キャラクター』の略称になります。
これもマイブームと同様に、矛盾した構成になっています。
キャラクターというのは本来ゆるくてはダメなんです。某夢の国のキャラクターは全然ゆるくないですし、確固たるイメージがありますよね。その他のキャラだってそう。アニメだろうが、漫画だろうがキャラ立ちしているからキャラクターなわけであって、そこに『ゆるさ』は必要ないわけです。
本来であればゆるいとキャラクターという相反するものをくっつける。そうして『ゆるキャラ』が生まれたんですね。
このように、みうらさんが名付けたブームのほとんどの名称は、水と油、もしくは全く関係がないものを結び付けて作られています。本文をそのまま引用すると
A+B=ABでなく、A+B=Cになるようにするのです。そしてAかBのどちらかは、もう一方を打ち消すようなネガティブなものにします。この「ゆるキャラ」は、その最たる例と言えるでしょう。
とおっしゃってます。マイとブームも本来結びつかないもの。ゆるいとキャラクターも本来は結びつかないもの。こういった矛盾した名称をつけることがみうらさんのブームを起こす上での一つの基盤となっているんですね。
自分洗脳と収集
あらゆる「ない仕事」に共通する事ですが、なかったものに名前を付けた後は、「自分を洗脳」して「無駄な努力」をしなければなりません。私はよく「努力が似合わない」などと思われがちなタイプですが、どっこい「無駄な努力家」なのです。
そう、みうらさんはかなり努力をされている方なのです。
見た目の風貌やお話されている感じからゆるキャラ同様ゆるーい感じの人なのかなーと思いがちですが、『ない仕事』をつくるためには相応の努力が必要なってきます。
基本的にないものなので、他人からすると興味どころか認識すらない可能性が高いですからね。まずはそのハードルを一つずつ超えていかなければなりません。
そのために、まずみうらさんが行っている事が、『自分を洗脳する事』だそうです。
ゆるキャラの場合「絶対にゆるキャラのブームがくる」と強く思い込んでいたとのこと。この辺が常人との違いでしょうか。
ただ、自分を洗脳するのは難しい。確かにその通り。自分自身を洗脳するなんて僕にはその術すらわかりません。ここでみうらさんの経験が生きてきます。
興味の対象となるものを、大量に集め始めます。好きだから買うのではなく、買って圧倒的な量が集まってきたから好きになるという戦略です。
人は「大量なもの」に弱いという事が長年の経験でわかってきました。大量に集まったものを目の前に出されると、こちらのエレクトしている気分が伝わって、「すごい!」と錯覚するのです。
面白いのは『自分自身を洗脳するため』に大量に物を集めるという発想ですね。グッズやパンフ、知識などそれはもうゆるキャラに関するありとあらゆるものを集め続けたわけです。
まず好きになるのではなく、大量にあるから好きになるという逆の発想。こんな事普通は思いつきません。真似できないけどほんとにおもしろいことする人だなーと思いましたね。まさに『無駄な努力をする』をし続けたというわけです。
僕らならせいぜい「あの地方に○○ってキャラがかわいかったんだよ。」と友達に言うぐらいですからね。友達も「へぇー。」位にしか反応しないでしょうし、とてもブームになんてなるはずもないんですが、そこを無駄な努力によって打開していくみうらさんは凄いなと改めて思います。
雑誌に売り込んだりイベントを開催する
ここまでで、自分を洗脳しそれが好きだと思い込んで物や知識を収集するという行為は終わりました。ただ、これではただのマニアなコレクター。ちょっと変わった人が一人いるだけです。
ブームを作るには世間に発表して認知してもらわなければなりません。ここまできて、始めて仕事になるというわけです。
みうらさんは『一人電通』として全ての事を自分で行っています。企画から発表まで全ての段取りを自分で行うわけです。どこの雑誌に売り込むか、どういうイベントを仕掛ければいいのかなどなど全て自分で行っていきます。
この辺りは『ない仕事』を作っていくわけですから無駄ではない努力になってきますね。ない仕事である限り向こうから興味を持つなんて事はまずないわけで、自分から積極的に働き掛けていかなければなりません。
ブームとは誤解された時である。
みうらさん曰く、規模が徐々に大きくなり広がってきたその後ブームとしての転換期となるのは『誤解』され始めた時とおっしゃっています。
ブームを仕掛けたみうらさんですら考えもしなかったような「深読み」をしてくれる人たちが現れて、あれこれ語ってくれるようになるのです。この『勝手に独自の意見を言い出す人』が増えた時にブームというのは生まれるものとのこと。
こういう気づきはブームを仕掛けた張本人にしかわからないものなのかもしれませんね。僕らはいつの間にかブームになってたなぁって思うことがほとんどですから。
誰かが独自の意見を言い出すって事はある程度多くの人に認知され始めたって事なんでしょうね。どれぐらいの規模かは分からないけど一定数声出すとそういう現象が起こり始める。確かに○○ブームとかってなると次に評論家っぽい人が出始めて「○○とはこういうものだ。」とかなるのがセットになっているような気がします。
最近だと何だろうなー。今までなかったけど今あるものといったらブログとかYouTubeとかもそうなのかな??今はブームではないかもしれませんが、そういう一時期はやったものがどの時点ではやったのかを調べたりしてみるのも面白いかもしれませんね。
まとめ
本書にはその他にもみうらさんの『ない仕事のつくりかた』から実際に作られた仕事が具体例としてたくさん掲載されています。どの仕事もみうらさんが作らなければおそらくない仕事として日の目を見る事はなかったでしょう。
そんなみうらさんの発想力に触れてみたい方はぜひ本書をご覧になってみてください(^^)/楽しみながら読めると思います♪
それでは今回はこの辺で。
最後までご覧いただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします♪