今回はNHKの『ハートネットTV』を見ていて、興味深い人を発見したので皆さんに紹介したいと思います♪
現代美術家、渡辺篤
うつ病を発症するまで
今回番組で紹介されていたのは現代美術家の渡辺篤さん。渡辺さんは10年間うつ病を患い、合計3年ほどひきこもった経験がある方です。
まず渡辺さんの経歴を簡単に説明しておきます。
渡辺さんはもともと運動が苦手で、友達の輪にも入れずいつも一人で遊んでいた子供でした。それが小学校の時授業で描いた絵がコンクールに入賞。この受賞により「自分にも人に負けないものがある」ということに気付けて自信を持つことができたそうです。
中学に進んだ渡辺さんは美術の予備校に通いながら画家を目指します。そして4浪の末東京藝術大学へと合格を果たすのです。
やっとの思いで大学に入学した渡辺さん。しかしここからが試練の始まりでした。厳しい入学試験を突破しても卒業後芸術家として成功できるのはほんの一握りであるという現実に直面してしまうのです。さらに自分よりも活躍する他人への嫉妬、そして自分を追い込む毎日。
そんな日々の中やがて渡辺さんは情緒不安定になりうつ病を発症してしまうのです。ここで初めて味わう大きな挫折。
「藝術大学にも受かったこの僕が精神科や心療内科に行かなくちゃいけないの?」
自分は負けた、捨てられた、廃棄された、そんな使い物にならない存在だということを感じた渡辺さんはやがて脱落した絶望感を抱くようになり、そこから社会を風刺するような作品を作るようになります。
ところがいくら社会を批判しても渡辺さんの心は晴れません。
今度はひきこもりに
そんな自分の活動に行き詰まりを感じた渡辺さんは実家にひきこもります。この時31歳。ひきこもり中はずっと床に伏せ、昼間でもカーテンを閉め切った状態で過ごす日々だったそうです。
「俺の人生終わった」
こんなはずじゃなかったと思いながらひきこもる日々。やがて渡辺さんが抱えたやり場のない怒りの矛先は母親に向かいます。
「すぐそばにいるのに何もアプローチしてこない」
そう思った渡辺さんは応接間の扉を蹴破ってしまうのです。しかしそこで目にしたのは弱り切ったお母さんの姿でした。
そのお母さんの姿を目の当たりにした時に渡辺さんはふと気づいたそうです。
今まで自分が傷ついたことをずーっと見ていた。そしてどうやって同じ傷を誰かに与えようか、どう傷を表すかということばかり考えていた。そうじゃなくて本当の傷の治し方は
「自分が幸せになること」
人が羨むぐらい幸せになったらそれはもう勝ちじゃんということに気づいた渡辺さんはついに部屋から出るようになるわけです。
気づきを得た渡辺さんはかつて嫉妬していた藝術大学の友人達とも普通に接することができるようになったのです。自分が幸せになる、それには嫉妬などの感情は必要ないということに気づいたのでしょう。
傷ついた経験を活かした作品づくり
渡辺さんはご自身がひきこもったり傷ついた経験を生かした作品を発表しています。たとえばひきこもり当事者の方の部屋の写真を募集しそれを展示してみたり、自分がひきこもっていた時の部屋や自分の姿を映した写真を展示したりもします。
また番組内で取り上げられた中で僕が一番印象的だったのが「あなたの傷を教えてください」というプロジェクト。これは渡辺さんのホームページに色々な人の傷ついた経験や辛い気持ちを投稿してもらいそれを作品にするというものです。
詳しくは⇩から動画を見てもらうとよりわかりやすいかと思います。
動画を見てもらうとわかるのですが、渡辺さんのもとには辛さを抱えた様々な人たちの心の叫びのような言葉が届けられます。その言葉を丸いプレートのようなものに書いていく。
そのプレートを渡辺さんはハンマーでたたいて砕きまたくっつけます。プレートはひび割れた状態でくっついていてこれがまさに「傷ついて壊れてしまいそうな人々の心」を表現しているというわけです。
この作品に関して渡辺さんはこんな言葉で語っていました。
「割れたらまた継げばいい。何度でもくっつければ大丈夫」
傷つき、一時期は心が壊れかけるぐらいつらい経験をした渡辺さんだからこそ言えることなのでしょう。とても説得力があってそして温かいく前向きな言葉ですね。
さらに渡辺さんはこんなこともおっしゃっていました。
「もしかしたら傷ついた経験は財産や才能を手に入れることなのでは?」
確かに傷つくことは辛いことです。人によっては死んでしまいたいと思うかもしれない。軽々しく大丈夫だなんて言えない現実もあるはずです。でも、一方で傷ついたからこそわかること、表現できることがあるというのもまた事実です。渡辺さんも傷つきひきこもった経験がなければ先ほど紹介したような作品を作ることもなかったはず。「あなたの傷を教えてください」というプロジェクトもそんな彼の経験があったからこそ生まれたものです。
最後に
渡辺さんは作品を世の中に提案することで自分自身も救っているとおっしゃっていました。
読者の方の中には今も傷つき悩んでいる方もいるかもしれません。そういう方に提案したいのは渡辺さんのように傷ついた経験を何かで表現してみるのはどうだろうか?ということです。別に渡辺さんのように芸術じゃなくて文章でも、歌詞でも、詩でも、俳句でも、音楽でも、歌でも、ダンスでもなんでもいい。あなたの傷ついた経験や思いを外に表現してみるんです。
もしかしたらその表現があなた自身を救い、そして同じような苦しみを抱えている誰かの力になるかもしれません。傷ついたからつらい思いをした人だからこそできることというのがきっとあるはず。今回渡辺さんのお話を聞いていて僕はそう思いました。
あなたの傷ついた経験があなた自身を救いそして誰かを救うかもしれない
それでは今回はこの辺で。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
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