今回はこんな本を読んでみました。
著者の梯久美子さんは編集者から文筆業に転身された方で、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞されています。
本書は梯さんが太平洋戦争が終わった昭和二十年の夏に兵士であった五人の著名人の方にインタビューし書籍化したものです。
- 金子兜太(俳人)
- 大塚初重(考古学者)
- 三國連太郎(俳優)
- 水木しげる(漫画家)
- 池田武邦(建築家)
この方達が実際の戦争体験について語ってくれています。単なる一兵卒であったり将校であったり立場は違いますが、各々まぎれもなく戦場で死と隣り合わせの日々を過ごし
た方達です。
彼らの語る内容は当事者ならではのものであり、僕ら戦争を知らない人間たちに「戦争とはどういうものなのか?」を教えてくれています。
戦争を知る貴重な資料として
このブログを書いているのは2016年。既に戦後70年以上経過しており、戦争を経験した人たちの多くがこの世を去っています。
本書に登場する5人の方達のうち、水木しげるさんと三國連太郎さんもすでにこの世を去っています。あと10年もすればおそらくですが、残りの3名の方も、その他の当時戦争に参加した人たちというのはほとんどいなくなってしまうでしょう。
※水木先生は2015年に93歳で、三國連太郎さんは2013年に90歳で亡くなっています。
ますます戦争を知らない世代が増えていく中で、僕らに戦争の悲惨さ、恐ろしさ残酷さを教えてくれる人たちがいなくなってしまう。この本はそういった人たちに変わって戦争の恐ろしさや悲惨さを教えてくれる貴重な死霊の一つとなるでしょう。
五人の方達それぞれが当時の事を振り返る中で、どの方たちの話でも簡単に人が死んでいく。飢餓や敵からの攻撃などであっけなく人の命が消えていきます。人の命というものがこれでもかというぐらい軽く扱われ、失われていくのが戦争。
僕は戦争には全く縁遠い人間だけど、戦争だけはしちゃいかんとこういう人たちの体験記などから日々思いますね。決して美化しちゃいけない、それが戦争だということです。
五人の方達のエピソードはどれも印象的でしたが、特に心に残ったのは池田武邦さんが言ったこの言葉。
軍部が勝手に戦争を始めたという人たちがいます。戦争指導者たちがすべて悪いんだと。本当にそうでしょうか。戦前といえども、国民の支持がなければ戦争はできません。開戦前の雰囲気を、僕は憶えています。世を挙げて、戦争をやるべきだと盛り上がっていた。ごく普通の人たちが、アメリカをやっつけろと言っていたんです。真珠湾攻撃のときは、まさに拍手喝采でした。
なぜ無謀な戦争を避けられなかったのか。その理由は、日本人一人一人の中にあるはずです。辛くてもそれと向き合わないと、また同じことを繰り返すに違いありません。
戦前の世論というのはマスコミに煽られていた部分があったの間違いないでしょう。でもその煽りにやられて戦争へと突き進んでしまったというのは、国民でありそこは皆が反省するべきことです。どこかで冷静になる必要があった。「ほんとに戦争やっていいのか?」と疑問を持たなければならなかったわけです。
池田さんが言うように、「自分たちにも原因はある」と向き合わないことには、もしかしたら未来でまた同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。それでは歴史、そして先人たちの尊い犠牲から何も学べていないことになります。
そうならないためにも、僕たち戦争を知らない世代もこの本だけでなく、様々な書籍や戦争体験者の話や歴史から学ぶことが大事になってくるんじゃないでしょうか。二度と同じ過ちを繰り返さないために。
最後に
70年以上前に太平洋戦争(日中戦争なども含む)で亡くなった方達は一説によると日本人だけで300万人以上になるそうです。あまりにも多くの方達が犠牲になりました。もちろん日本と戦った諸外国でもおびただしい数の人たちが亡くなっています。どれだけの人が戦争によって人生を狂わされたのだろうか?と思うと目頭が熱くなってしまいます。
今回本書に登場した方達はご自身の努力と運によって功を成し遂げました。でもたとえ同じように生き延びたとしても戦争によって人生を狂わされた方たちがたくさんいたはずです。たとえ生き延びて功を成し遂げたとしてもその人の頭から戦争のことが消えてなくなることはありません。そのことも忘れてはいけない。
犠牲になった方達のために今を生きる僕たちができることは何でしょうか?おそらく「戦争の恐ろしさを後世に伝え続けること」「二度と戦争を起こさないようにすること」「平和な国であり続けること」
なんじゃないかなと思います。何度も言いますがそのためには歴史を学び、二度と同じ過ちを繰り返さないことです。その大切さを本書を読んで改めて感じました。
「戦争とはどういうものなのか?」それを知りたい方はぜひ一度読んでみてください。
それでは失礼いたします。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。