ふとTVを見ていたら、キリン氷結のCMが流れていた。若い女優さんが登場する爽やかなCMだ。すると、映像と共にずいぶん前によく聴いていた曲が流れてきた。そうレミオロメンの『南風』という曲である。
この曲が発売されたのが2005年。なんともう20年近くも前になる。CMを見て懐かしさに浸りながら、「今の20歳前後の人は、この曲の存在すら知らない可能性もあるのか」なんて思って、時の流れをひしひしと感じた。僕のようなアラフォー世代には懐かしさしかないが、逆に今の若い人たちにとっては、「初めて聴いたけどなんかいい曲だなぁ」なんて感じで新鮮なのかもしれない。
ちなみにこの曲が出た時、僕は大学生で当時はMDウォークマンにこの曲を入れて、時々聴いていた。(若い人はMDウォークマンって知ってる?)カラオケでも何度か歌った記憶がある。レミオロメンの大ファンというわけではなかったけど、メロディの爽やかさと、ボーカルの藤牧さんのちょっとクセのある歌い方とかも含めて、気に入っていた曲だった。
確かレミオロメンは結構前に活動休止していたよなぁと思い調べてみた。なんと2012年に活動休止していた。そうか、もう10年以上経つのか。休止ということは解散ではないから、いつかまた何かのきっかけで再始動するなんてこともあるんだろうか?歳を重ねた藤巻さんの歌も聴いてみたいなんて思う。
CMをみたあと、つい、懐かしくなってYouTubeで『レミオロメン 南風』と検索してみると、おそらく公式であろうチャンネルにPVがあったので観てみた。いい意味で今っぽくはなく、うまく言い表せないんだけど「あぁ、なんか平成って感じがする」というPVで、観ていてほっこりした。コメント欄を見てみると、どうやら僕と同じく氷結のCMを見てYouTubeにたどり着いた人も結構いるようだった。
コメント欄には、投稿者の人たちが『南風』を聴いていた当時の自分や誰かとの思い出を書いたりもした。色々な人の人生の1ページに、この曲が寄り添っているんだろうなぁ。僕自身は『南風』を聴いて、ピンポイントで大事な思い出が浮かび上がってくることはなかったが、それでもぼんやりと20年近く前に若者をしていた時のことを一瞬思い出して、ちょっとグッときてしまった。
厄介なのは、「懐かしさ」は僕らの心をグイグイと鷲掴みにし、揺さぶってくるということだ。名作と言われる『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲』でも、描かれていたことだけど、それは、なかなか抗い難い強力なものだ。そして、懐かしさは「あの頃にはもう戻れない」という、どうしようもなく寂しい感情も連れてくる。それが無性にやり切れなくなる時もある。理性ではわかっていても、感情がざわついてしまう。
「戻りたいけど戻れないんだよなぁ。」
『南風』のPVを見終え、一通り懐かしさに心を揺さぶられた後、僕は心の中でつぶやいた。そして、YouTubeを閉じて、20年前の思い出も閉じた。歳を重ねれば重ねるほど、懐かしさにやられそうになるので、自分を保たねばならない。
今日も懐かしさと寂しさに後ろ髪を引かれながら日常に戻る。