先日、紹介した『アルコールとうつ・自殺』という本。これ、アルコールとうつと自殺の関連性について、しっかり認識できるいい本だと思うんですよね。
まぁ、ただどうしても取り扱うテーマがテーマだけにエビデンスだとか事例だとかお堅い内容になりがちではあるんですけどね。もちろん、個人的にはすげぇ参考になる一冊だしぜひ多くの人に読んでもらって「アルコールって場合によっては危険なんだよ」っていうのを認識してもらえたならなぁと思います。
でね、今回はこの本に書かれている「多くの人に知っておいてほしいこと」という部分が、非常にシンプルではあるんだけど、文字通り多くの人に知っておいてほしい内容だなと思ったんですよね。なのここでシェアさせてもらうかなと思います。
お酒を飲む人に知っておいてほしいこととは?
『アルコールとうつ・自殺』の著者である松本先生曰く知っておいてほしいことは三つあるとのことです。
- 「追いつめられたときに、飲みながら物を考えるな!」
- 「眠れないときには専門医に相談を!」
- 「酒は二合まで!」
一つずつ説明していきます。
1 「追いつめられたときに、飲みながら物を考えるな!」
これについてはいくつか理由がありますが、本文からの引用がわかりやすいので載せておきます。
アルコールの影響下での思考は、ともすれば短絡的かつ自暴自棄的、あるいは自己破壊的な結論を引き寄せます。
引用元:『アルコールと・うつ自殺』p47 松本俊彦 岩波書店
この本でも具体的な事例を挙げて述べられていましたが、落ち込んだり精神的に辛い状況下でアルコールを摂取すると場合によっては非常に危険な状態に陥ってしまうことがあります。それはなぜかというと・・・
アルコールが理性を働かせるために重要な大脳皮質の機能を低下させてしまうからです。
アルコールによって理性が低下すると、僕たちは普段は取らないような衝動的な行動をとってしまったり、攻撃的な言動をしてしまうことがあるわけです。素面の人間からすると非常に短絡的にうつることを平気でしてしまう。
こんな理性が働かない状況で、現状何か問題を抱えていたとしたらどうなるでしょうか?当然だけど、その問題を解決するために冷静に何か判断をすることなんてできないわけです。それどころか「ああ、もう死ぬしかないかな」と全く論理的ではない答えを頭の中で出してしまう。そして、アルコールによって衝動性が高まった状態で突発的に自殺を実行するということが起こってしまうんですね。
これは悩んでいる本人はもちろんのこと、周りの人にも知っておいてもらいたい知識です。もし、あなたの周りに何か深刻な悩みを抱えている人がいるとするならば「酒でも飲んでパーっとやろうぜ」は危険であるということ。
その場では明るくワイワイ話していて、「ああ、大丈夫そうだな」と安心できたとしましょう。でも怖いのは別れた後の時間です。帰宅後に気分は落ち込み、衝動性や自暴自棄な状態で部屋には本人以外誰もいない。となると、衝動的な自殺を止める人はおらずそのまま帰らぬ人となってしまう。実際にそんなケースが本書の中でもいくつか紹介されています。
追いつめられたときには、飲まないし、飲ませてはいけない。非常に大事な知識だと思うので、ぜひ頭に入れておきましょう。
2 「眠れないときには専門医に相談を!」
私たちの調査では、借金自殺をされた人の多くが府民への対処として飲酒していました。そしてそうした方の多くが、次第に眠りに就くのに必要なアルコールの量が増えていき、最終的にはかなりの飲酒量になっているという現実があります。
引用元:『アルコールと・うつ自殺』p47
眠れないときについ寝酒を飲んで、眠りにつこうとすることってありますよね。僕もごくまれにではあるけど、そういう時があったりします。(といっても年に1回あるかないかだけど。)問題なのはその頻度が増えて段々と飲酒の量が増えていってしまうことです。
もちろん、その場ではアルコールの力によってどうにか眠りにつけるのかもしれません。ただ、それはあくまでその場しのぎにすぎません。ここで大事になってくるのは「眠れない原因はどこにあるのか?」を突き止めるということです。
そのために専門医を具体的には精神科医を受診してみる。もしかしたら、寝れないのは何か別の精神疾患が絡んでいるのかもしれないし、単に生活習慣がまずいだけなのかもしれません。
とにもかくにも原因が何かを把握しなければ問題解決のために具体的な行動に移せないわけですから、お酒であやふやにしないっていうことが大事になってきます。
3 「酒は二合まで!」
アルコール関連の専門学会が「適正飲酒」もしくは「低リスク飲酒(low risk drinking)」として提示している飲酒量は、日本酒換算で一合(三五〇mlの缶ビール一本半)までです。この数字にはまったく異論はなく、私も本来、飲酒は一合までにとどめるべきだと考えています。
引用元:『アルコールと・うつ自殺』p48
ここで気が付いた方もいると思います。酒は二合までと言っているにもかかわらず、引用した文章に書かれている適正飲酒は一合までにすべきだと書かれていることに。
この理由ははっきりしていてまぁ、平たく言えば「働き盛りの中高年の男性にその量を守るのは無理でしょう」ということからです。守るのが無理に近い量を「守ってください」と言われてもそれを素直に受け入れるのは難しい。なので、著者の松本先生は二合までにしましょうと提案しているわけです。
もちろん、この二合という数字も適当に設定されているわけではありません。
そこで私は、「自殺リスクを高めない飲酒量」を指標とすることにしました。ご承知の通り、その研究では、「一日あたり日本酒換算二合半以上飲酒する人では自殺リスクが高くなる」という知見が得られていました。そうすると、この「二合半」を超えない飲み方を徹底してもらうという啓発もありなのではないか、と考えたわけです。
引用元:『アルコールと・うつ自殺』p49
ただ、この「二合半」という数字をそのまんま用いてしまうと、中には二合半ぎりぎりの量まで飲んでしまう人もいるわけです。さらにはそのぎりぎりをいつの間にか超えて飲み続けてしまう人もいるでしょう。毎回そんなにしっかり適正量に収められるかといえばそんなことはないはずです。だから、少しだけ限界まで余裕を持たせるということで「二合」にしたのだと松本先生は述べています。
どうでしょうか?確かに一合だとお酒好きな人にはしんどいかもしれないけど、二合ならなんとかいけそうかも?という人はいるんじゃないですか?もちろん、一番いいのは一合を守ることなんでしょうけど、二合でも自殺リスクが高まる範囲内では抑えることができる。
妥協ではあるけど、現実的かつ効果的な根拠のある飲酒の量なのではないかなと思います。お酒は二合まで。これも覚えておきましょう!!
まとめ
今回は『アルコールとうつ・自殺』という本に書かれていた、多くの人に知っておいてほしいことという部分を紹介してみました。改めて大事な部分をまとめておきます。
- 「追いつめられたときに、飲みながら物を考えるな!」
- 「眠れないときには専門医に相談を!」
- 「酒は二合まで!」
非常にシンプルで覚えやすい内容です。でも、アルコールによって自殺を引き起こしたり、メンタルを悪化させないための知識としては非常に大事なものだと思うので、ぜひお酒を飲む人も、周りにお酒を飲む人がいる人も覚えておいてもらえればなと思います。