前回の記事で『薬物依存症』という本を紹介しました。
この本は薬物依存症とは何ぞやといった基本的なことから、回復や治療に何が必要なのかを学べる一冊なのでおすすめです。
でね、せっかくこの本を読んだわけですから、僕の復習も兼ねて「そもそも薬物依存症ってどういうものなの?」っていうのを簡単にお伝えしてみようと思います。
薬物依存症って何なの?
そもそも薬物依存症とはどのような病気なのでしょうか?僕たちはまずその基本的なことを知っておかなければなりませんね。先ほど紹介した『薬物依存症』という本には次のように書かれています。
もしも「薬物依存症のことを端的に説明しろ」といわれたら、「自分でやめよう、あるいは控えよう決意するにもかかわらず、何度も失敗してしまい、もはや薬物の使用が自分の意志ではコントロールできない状態」ということになります。
引用元:松本俊彦『薬物依存症』p037、筑摩書房
「自分の意志ではコントロールできない状態」
ここすごい大事だなと思うんですよね。よく、薬物依存症で捕まった人に対して「意志が弱いからだ!」って言う人いるじゃないですか?根性が足りないとか、我慢が足りないとか精神論にもっていく人もいる。でも、そもそも意志がいくら強かろうがコントロールできないのが薬物依存症なわけです。
そういう人に対して「意志が弱いんだよ!」と責めたところで何の解決にもなりませんよね。意志が強い弱い云々の問題ではないということ。まずはそこを大前提として考えていかなきゃいけません。
でさらに知っておきたいのは「じゃあなんで薬物をやめられないのか?」ってことです。なんで薬物依存やめられないと思います?コントロールできないから?うん、じゃあなんでコントロールできなくなっちゃうんでしょう?依存性が高いから?それも間違いではないんだけどもうちょい深堀りしていくと、薬物がなぜやめられないのか、その恐ろしさについても学ぶことができるはずです。
中枢神経系に作用する薬物に常習性があるのは、最終的にはそれらが脳内にある、快感の中枢ともいうべき部位をダイレクトに刺激するからです。
引用元:松本俊彦『薬物依存症』p043、筑摩書房
ここでは詳しい仕組みについては述べませんが、簡単に言うと薬物を使うことで最終的には報酬系回路と呼ばれる脳内にある快感の中枢が刺激されます。その結果、薬物を使った人は快感を覚えてしまい、薬物を使えばまたその気持ちよさを体験できるので繰り返し使ってしまうのです。
僕らは基本的に快感に弱いですよね。気持ちいいことを嫌う人ってあんまりいないはず。ただ、通常はその快感というものをなかなか体験できないわけですよ。スポーツとか勉強で頑張って「すごいね」って褒められたりした時に快感って得られるもんなんですね。
でも、勉強にせよスポーツにせよそこまでいくにはそれなりに努力を必要としますよね。すぐにいい結果が出て褒められるなんてことはまずありません。積み重ねた末にある程度の結果が出て褒められたりするわけです。
でも薬物を使っちゃうとそうした努力が必要なくなります。努力をすっ飛ばしていきなり快感を体験できてしまう。この手軽に気持ちよくなれちゃうところが薬物の魅力でもあり恐ろしさでもあるわけですね。
で、使用を繰り返していくとだんだん薬物のことばかり考えるようになります。刑務所に入って薬物を絶ったとしても関係ありません。出てきたらまた何かの拍子にやりたくなっちゃう。体がその快感を覚えてしまっているんですね。こうやって薬物に対して精神的に依存していってしまうのです。
なので繰り返しになりますが、「意志が弱いから」といって薬物依存症の人を責めても意味はありません。大事なのはそういう的外れな言葉で責めたてるのではなく、どうすればその人の状態がよくなるのかを社会全体で考え、仕組みを整えていくことなのだと思います。
まとめ
というわけで、今回は薬物依存症って何なのか?をかなり簡単にではありますが、説明してみました。まとめると
- 薬物依存症になると自分の意志ではコントロールできない
- その仕組みは脳の快感に関与する部位をダイレクトに刺激することで、手軽に快感を得られるためやめられなくなってしまう
- 依存症は自分の決意だけでどうにかなるものではない
ということです。
特に薬物をはじめ「○○に依存してしまうようなやつ意志が弱いんだ」という考えを持っている人にはぜひ考えを改めてほしいですね。
「依存症は意志だけじゃあ治らない」
思い込みや偏見は結果的に依存症の人を追い込み孤立させ、回復から遠ざけてしまいます。もし、自分の考えが思い込みであることに気づいたのならそれを変える勇気を持つことが大事なんじゃないかと。おそらく、僕もまだまだ思い込みや偏見にまみれているので、少しずつ学びながら「これは違ったんだ」ということがわかれば、それを受け入れていきたいなと思っています。
ではまた。